日本語の文字 1
 奈良時代の日本には,まだ平仮名や片仮名がなく,漢字だけで日本語を書き表していました。そこでは,漢字の音や訓を仮名のように使って日本語を書き表す方法が用いられていました。このように,読み方だけで表すために用いられた漢字を「万葉仮名(まんようがな)」と呼びます。
 

【問 題】 下の表をヒントにして,読んでみましょう。
 

 ① 波留

 

 ② 許己呂

 

 ③ 多可良

                              
可,蚊,迦
夜,八
己,許,古
麻,間
欺,為
奈,名
 米 
 礼 
 尓 
毛,母
 

「万葉集」の歌人,山上憶良やまのうえのおくらの歌に,次の短歌があります。
しろかね 母 くがね 母 たま 母 奈尓世武尓 麻佐礼留多可良 古尓欺迦米夜母
   も   も   も なにせむに まされるたから こにしかめやも

(銀も,金も,宝石ほうせきも,どうして,子どもというすばらしいたからにおよぶことがあろうか。)
 この歌の「銀」「金」「玉」の三文字は,漢字の意味どおりに用いられていますが,他の文字は,意味ではなく,音や訓を表しています。