富士山と和歌

美しい富士山は昔から多くの歌に詠(よ)まれてきました。富士山の姿を想像しながら、声に出して読んでみましょう。
富士のねの 煙も空に 立つものを などか思ひの 下にもゆらむ 
                         (金槐和歌集)

(よみかた)ふじのねの けむりもそらに たつものを などかおもいの したにもゆらん

   【意味】
    富士の煙は空に向かって立ちのぼって行くのに、どうして同じ「火」という
    名のつく「思ひ」は上に上らず、心の下に燃えるのであろうか。
富士のねの 煙もなほぞ 立ちのぼる 上なきものは 思ひなりけり 
                          (新古今和歌集・藤原家隆)
(よみかた)ふじのねの けむりもなおぞ たちのぼる うえなきものは おもいなりけり

   【意味】
    富士山の山頂には煙が依然(いぜん)として立ちのぼっている。際限なく立ち
    のぼるのは、わたしの燃える思いなのだろうよ。
天の原 富士の柴山 木の暗れの 時移りなば 逢はずかもあらむ(万葉集)

(よみかた)あまのはら ふじのしばやま このくれの ときうつりなば あわずかもあらん

   【意味】
   富士山の柴の生えた山の木陰(こかげ)の暗がりに、今日の夕方、約束の時間が
   過ぎてから行ったら、二度と逢うことができないだろうな

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