あすなろ学習室国語の部屋表現の部屋(中学校)>短歌の世界

短歌の世界 1 ヒント 

 一首の中の意味上の切れ目を「句切れ」といいます。句切れには,それがどこにあるかによって,「初句切れ・二句切れ・三句切れ・四句切れ」があります。五七五七七のはじめの五で句切れる歌が初句切れの歌です。 
 声に出して読んだり,句読点を打つことのできる位置を探したりしながら,句切れについて考えてみましょう。


海恋し潮の遠鳴りかぞへては少女となりし父母の家   与謝野 晶子

 ふるさとを遠く離れて母となった作者が,遠いふるさとを懐かしく思い返している歌です。

あすなろの高き梢を風わたるわれは涙の目しばたたく  木下 利玄

 愛児を失う悲しみをよんだ歌です。

みづうみの氷がとけてなほ寒し三日月の影波にうつろふ 島木 赤彦

 湖の氷は解けてもまだ寒さは厳しく,冷たい波が三日月の光を静かに映している。そんな情景をよんだ歌です。

いちはつの花咲きいでて我目には今年ばかりの春ゆかんとす 正岡 子規

 いちはつは5月ごろ咲く花ですから,もう春は終わろうとしています。そしてその春は,「今年ばかりの春」,もう二度と見ることのできない春なのです。残された命の長くないことを自覚していた作者は,去りゆく春と自分の命とを重ね合わせながらこの歌をよんだのでしょう。